木の葉の女子の萌え事情
びゅおう、びゅおうと。風が吹く。
荒野の只中、少し高い位置に立つサスケを、サクラはナルトより少し下がった位置から見上げていた。
数ヶ月前に音隠れの隠れ里で再会した時とは比べ物にならない程、サスケの顔色は健康的だ。あの時にはなかった、覇気のようなものさえ感じられる。
そして、何よりも。
その傍らに三人の少年少女が立っている。
大蛇丸の側に立ちながら孤独だったあの時とはまったく違う、連帯感のようなものさえ感じさせて。
仲間、なのだ。彼らは。サスケの。
サクラは。
――――サクラは。
きゅっと唇をかみ締めると、徐にポーチに手を伸ばす。
そして。
カシャッ!
「? サクラ?」
傍らのサイが不思議そうに問うてきても答えない。たった今撮った写真を転送することに集中する。
ちゃりら〜んと、風の吹く荒野に間のぬけた明るい効果音が流れると、それから間をおくことなく携帯の呼び出し音が鳴った。
「あ、イノ?! 見た?!」
「そうっ! 凄いでしょ?! ちょっともうさすがあたしのサスケ君よ! 美少年には美少年が寄ってくるのね!」
「あたし初めて大蛇丸に感謝したわっ! あの服を見た時は内心ドン引きだったけど、ななななななんかもう色気は増してるしもうこうなればなんでもいいかなって!」
「でしょー?! 隣の男の子も綺麗だし女はまあ邪魔だけどよしとして妄想しがいがあるっていうか!」
「それ売れそう?! じゃあもうちょっと画像よくしないと無理じゃない? いける?」
「わかったわ! 頑張るわ私! カカシ先生の素顔寝姿以上の大ヒットは見込めないにしても、絡みがあればどうにかなるわよねっ!」
「OK。そっちは任せたわ、じゃあね」
サクラはほうっとため息をつくと、いい笑顔を浮かべながら、言った。
「さ、続けましょうか」
「‥‥‥ナルト」
「なんだってばよ」
「サクラはどこに向かってるんだ?」
「知らねえよもう(涙声)」
「‥‥‥‥‥‥おい」
「カカシ先生の素顔寝姿写真集なら俺の大事な夜のオカズだから見せねえってば」
「いらねえよそんなガビガビしてそうなもん。‥‥‥新しいのは買えないのか」
「サクラちゃんならもってそうだけど、その代わりを要求されると思うぞ?」
「‥‥‥(無言)」
「サッ、サスケ! それってばおまえ!」
「カカシの下忍以前の写真。大蛇丸から巻き上げた」
「うおおおおおおっ! すげえ可愛いっ! 天使だってばよ!」
「コピーならやらんこともない」
水月はぽつりと、仲間二人に呟いた。
「‥‥‥木の葉って」
オチはない。意味もない。あるのは萌えのみ。それが木の葉の女子。
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